物流費の高騰はなぜ起こる？原因から見るコスト削減方法をご紹介
近年、物流費の高騰が多くの企業の収益を圧迫しています。物流費の高騰により、経営が圧迫されている企業も少なくありません。
本記事では、物流費高騰の主な原因を解析し、企業が実践できるコスト削減方法をご紹介します。燃料費の上昇、人手不足、2024年問題など、複合的な要因が絡み合う物流費高騰の実態を理解することは、自社に最適な対策を見つける近道となります。
物流費高騰の現状とその影響
物流費の高騰は、企業経営に深刻な影響を与えています、ここでは、物流費高騰の現状と企業が直面している課題、そして業界ごとの負担率について詳しく解説します。
物流費高騰の現状
近年、日本の物流業界では、燃料価格の高騰、人件費の増加、そしてドライバー不足の深刻化など、複数の要因が重なり物流費が継続的に上昇しています。
この傾向は、特に2020年代に入ってから顕著になっており、多くの企業にとって無視できない経営課題となっています。
物流コストは、運送費だけでなく、倉庫の保管料、荷役費、情報システム費など、サプライチェーン全体にわたる費用で構成されていますが、これらの要素が軒並み上昇しているのが現状です。
物流費の高騰が企業経営に与える影響
物流費の高騰は、企業経営に多方面で深刻な影響を及ぼしています。
コスト増を吸収できない企業は、製品の販売価格に転嫁せざるを得なくなり、結果として消費者の負担増につながる可能性もあります。
さらに、物流コストの増加は、新規事業への投資や研究開発費の削減につながり、企業の成長戦略にも悪影響を及ぼしかねません。
業界別の物流費負担率
物流費の負担率は、企業の属する業界や事業形態によって大きく異なります。一般的に、製品の単価が低く、配送頻度が高い業界ほど、物流費が経営に占める割合は高くなる傾向にあります。
特に、食品や飲料品、日用品などのメーカーは、頻繁な配送と温度管理などの特殊な要件から、物流コストが経営を圧迫しやすい状況です。
小売業やEC（電子商取引）業界においても、多品種少量配送や当日配送といった顧客ニーズへの対応が求められるため、物流費は売上高に対する重要なコスト要因となっています。
物流費が高騰する5つの主な原因
物流費が高騰する背景には、燃料価格の変動、労働力不足、法規制の強化、倉庫関連コストの増加、そして国際的な輸送コストの上昇といった複数の要因が複雑に絡み合っています。これらの原因を深く理解することが、効果的な対策を講じる第一歩となります。
原因①：燃料価格の上昇
物流費高騰の直接的な原因の一つは、原油価格の変動に起因する燃料価格の上昇です。原油価格は、OPEC（石油輸出国機構）の生産調整、地政学的リスク、世界経済の動向など、国際的な要因によって大きく変動します。
この変動がガソリンや軽油の価格に直結し、トラックや船舶、航空機などの輸送手段の運行コストを直接的に押し上げています。
多くの運送会社では、燃料価格の変動を運賃に反映させる「燃油サーチャージ」制度を導入していますが、それでも企業が負担する物流コストは増加傾向にあります。
原因②：ドライバー不足と人件費の増加
物流業界全体で深刻化するドライバー不足は、人件費の上昇を招き、物流費高騰の大きな要因となっています。
少子高齢化の進展に加え、長時間労働や重労働といったイメージ、賃金水準への不満などから、若年層のドライバー志望者は減少しています。
この結果、運送会社は人材確保のために賃上げや福利厚生の充実を図る必要があり、これが人件費の増加にも直結しています。特に、経験豊富なドライバーの確保は難しく、採用コストや育成コストも増加の一途をたどっています。
原因③：2024年問題による運送能力の低下
2024年4月1日から適用されたトラックドライバーの時間外労働規制強化（いわゆる「2024年問題」）は、運送会社の運行計画に大きな影響を与え、運送能力の低下とコスト増を招いています。
この規制により、ドライバー一人あたりの走行距離が短縮され、これまで一日で完了していた輸送が複数日にわたるケースや、複数のドライバーが必要となるケースが増加しています。
原因④：倉庫費用・保管コストの上昇
物流拠点となる倉庫の賃料や運営コストの上昇も、物流費全体の高騰に寄与しています。Eコマース（電子商取引）の拡大に伴い、物流施設の需要が世界的に高まっており、特に都市部や交通の便が良い立地では、倉庫の賃料が上昇傾向にあります。
また、倉庫内でのピッキングや梱包作業を担う人材の確保も難しくなっており、人件費の増加は避けられません。
原因⑤：国際物流における海上運賃の高騰
グローバルサプライチェーンにおいては、海上輸送を担うコンテナ船の運賃高騰が、輸入・輸出コストを押し上げる主要因となっています。
近年、世界的なコンテナ不足や主要港での混雑、さらにはスエズ運河や紅海情勢などの地政学的リスクによる航路変更が頻発し、海上運賃が一時的に急騰する事態が発生しました。
上記のような要因は、船会社の運航コスト増加や供給能力の低下を招き、結果として荷主企業が負担する海上運賃の大幅な値上げにつながっています。
国際貿易に依存する企業にとっては、この海上運賃の高騰は製品原価を押し上げ、利益率を圧迫する大きな課題となっています。
物流費の高騰が企業にもたらす影響
物流費の高騰は、企業の収益性、競争力、そして顧客満足度など多岐にわたって深刻な影響を及ぼします。コスト増大だけでなく、事業運営の根幹を揺るがす可能性も秘めているため、その影響を正確に理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。
利益率の低下
物流費の増加は、製品やサービスの原価を押し上げ、企業の利益率を低下させる最も顕著な影響の一つです。
特に、薄利多売のビジネスモデルや粗利率の低い商品を扱う企業にとって、物流コストのわずかな上昇も経営を圧迫する大きな要因となります。
原材料費や製造コストに加えて物流費が上昇することで、営業利益が減少し、最終的な経常利益や当期純利益にも悪影響が及びます。
これにより、企業は新規事業への投資や研究開発、従業員の賃上げなど、将来に向けた成長戦略に必要な資金を確保することが難しくなる可能性があります。
販売価格への転嫁の難しさ
物流費の高騰分を販売価格に転嫁することは、市場競争の激化や消費者の価格敏感性の高まりから、多くの企業にとって非常に難しい課題となっています。
競合他社が価格を据え置いている場合、自社だけが値上げをすれば、市場シェアを失う可能性があります。
また、消費者は商品の品質だけでなく価格にも敏感であるため、価格上昇は購買意欲を低下させる要因にもなります。結果として、企業はコスト増を自社で吸収せざるを得なくなり、利益率のさらなる悪化につながるケースも少なくありません。
配送遅延とサービス品質への影響
ドライバー不足や人件費高騰が加速することで、結果的に配送遅延やサービス品質の低下を引き起こす可能性があります。
運送会社が十分な輸送能力やドライバーを確保できなくなると、希望通りの配送日時が守れなくなったり、特定の地域や時間帯での配送が困難になったりすることが増えます。
特に、ECサイトなどで迅速な配送が当たり前となっている現代において、配送遅延は顧客からのクレーム増加やリピート率の低下を招き、企業の信頼性を損なう重大な問題となり得ます。
物流費を削減する6つの実践的方法
物流費の高騰に直面する企業にとって、コスト削減は大きな課題です。ここでは、具体的な6つの実践的な方法をご紹介し、それぞれの詳細について解説します。
方法①：物流ネットワークの最適化
物流ネットワークの最適化は、拠点配置や輸送ルートを見直すことで、無駄をなくしコストを削減する方法です。
配送拠点の集約・再配置
複数ある倉庫や配送センターを統廃合し、最適な場所に再配置することで、輸送距離の短縮や管理コストの削減を図ります。
輸送ルートの見直し
最新の配送計画システムなどを活用し、渋滞情報や荷量に応じて最適なルートを動的に選択することで、燃料費やドライバーの労働時間を削減します。
輸送モードの選択
トラック輸送だけでなく、鉄道や船舶、航空輸送など、輸送する荷物の特性やリードタイム、コストを考慮して最適な輸送モードを組み合わせることで、全体的な物流コストを抑制します。
方法②：共同配送・混載便の活用
共同配送や混載便の活用は、複数の企業の荷物をまとめて運ぶことで、積載効率を高め、輸送コストを削減する効果的な手段です。
この方法は、特に中小企業や少量多頻度配送を行う企業にとって有効です。
積載率の向上
一台のトラックに複数の荷主の荷物を積載することで、トラックの空きスペースを減らし、一台あたりの輸送コストを分担できます。
CO2排出量の削減
トラックの運行台数を減らすことができるため、環境負荷の低減にも貢献します。
幹線輸送の効率化
長距離輸送において特に効果を発揮し、トラック一台あたりのコストを大幅に削減できる可能性があります。
方法③：在庫管理の効率化とリードタイムの短縮
適切な在庫管理とリードタイムの短縮は、倉庫費用や保管コストを削減し、機会損失を防ぐ上で不可欠です。
適正在庫の維持
需要予測の精度を高め、過剰在庫を抱えないようにすることで、保管コストや廃棄ロスの発生を抑制します。
ジャストインタイム（JIT）方式の導入
必要なものを、必要な時に、必要なだけ生産・調達することで、在庫を最小限に抑えます。
リードタイムの短縮
生産から納品までの時間を短縮することで、在庫回転率を高め、保管期間を短縮します。
倉庫スペースの有効活用
在庫配置の最適化や自動ラックシステムの導入などにより、限られたスペースを最大限に活用し、賃料や管理費の削減を図ります。
方法④：物流DXによる業務効率化
物流DX（デジタルトランスフォーメーション）の推進は、最新技術を導入して物流業務全体の効率を高め、コスト削減と生産性向上を実現します。
WMS（倉庫管理システム）の導入
入出荷、在庫、ピッキングなどの倉庫内業務をシステムで一元管理し、作業の自動化や精度向上を図ります。
TMS（輸配送管理システム）の導入
配車計画、運行管理、動態管理などを最適化し、配送効率を高め、燃料費や人件費を削減します。
AI・IoTの活用
AIによる需要予測の精度向上、IoTデバイスによるリアルタイムな荷物追跡や倉庫内環境監視により、サプライチェーン全体の可視化と最適化を進めます。
RPA（ロボティック・プロセス・オートメーション）の導入
請求書作成やデータ入力などの定型業務を自動化し、人為的ミスを減らし、従業員の負担を軽減します。
方法⑤：適正な物流パートナーの選定と契約見直し
物流パートナーの選定と既存契約の見直しは、サービス品質を維持しつつ、コスト効率の良い物流体制を構築するために重要です。
複数業者からの見積もり取得
複数の物流業者から見積もりを取り、サービス内容と料金を比較検討することで、最もコストパフォーマンスの高いパートナーを選定します。
長期的な視点でのパートナーシップ構築
単に価格だけでなく、信頼性、サービス品質、提案力なども考慮し、長期的な視点での協力関係を築けるパートナーを選びます。
契約内容の定期的な見直し
現在の契約内容が市場価格や自社のニーズに合致しているかを定期的に確認し、必要に応じて料金交渉やサービス内容の変更を検討します。
アウトソーシングの範囲検討
自社で内製する部分と、外部の専門業者に委託する部分を明確にし、それぞれのメリット・デメリットを考慮して最適なバランスを見つけます。
方法⑥：梱包・荷姿の最適化
梱包方法や荷姿（にすがた）を見直すことは、輸送効率の向上、資材コストの削減、破損リスクの低減に直結します。
梱包資材の見直し
過剰な梱包を避け、必要最小限でかつ強度のある資材を選択することで、資材コストを削減し、環境負荷も低減します。
荷姿の統一・標準化
段ボールのサイズやパレットへの積載方法を標準化することで、トラックやコンテナへの積載効率を高め、輸送コストを削減します。
緩衝材の最適化
輸送中の破損を防ぎつつ、緩衝材の使用量を減らすことで、コストと環境負荷を同時に低減します。
軽量化
可能な範囲で商品の軽量化を図ることで、輸送時の燃料費削減に貢献します。
今後の物流費動向と対策の重要性
物流費の高騰は一時的な現象ではなく、今後も継続する可能性が高いと予測されています。企業が持続的に成長するためには、早期かつ抜本的な対策を講じることが不可欠です。
2025年以降の物流費予測
2024年問題によるドライバーの労働時間規制強化は、2025年以降も物流業界に大きな影響を与え続けると予測されます。
これにより、運送能力のさらなるひっ迫や人件費の上昇圧力は継続し、物流費は高止まり、あるいはさらに上昇する傾向が続くでしょう。燃料価格の変動、環境規制の強化、国際情勢の不安定化なども、物流コストに影響を与える要因として見込まれます。
早期対策の必要性
物流費の高騰は、企業の利益率を圧迫し、販売価格への転嫁の難しさやサービス品質の低下を招く可能性があります。
これらの負の影響を最小限に抑え、企業の競争力を維持するためには、現状分析に基づいた戦略的な物流コスト削減策に早期に着手することが極めて重要です。
対策が遅れるほど、その影響は広範囲に及び、回復にはより多くの時間とコストを要することになります。
物流費高騰に関するお悩みは物流コンサルへ
本記事で解説したように、物流費高騰の要因は複雑に絡み合っており、その対策も「物流DXの推進」から「物流ネットワークの最適化」、「適正なパートナー選定」まで多岐にわたります。
しかし、これらの対策を自社だけで実行しようとしても、「どこから手をつけるべきか分からない」「本当に自社に最適な物流パートナーを選べているか不安」といった壁に直面することも少なくありません。
物流費高騰という継続的な課題に対し、場当たり的な対策ではなく、戦略的かつ抜本的な見直しを行うためには、客観的な視点と専門的な知見が不可欠です。
ベスト・ロジスティクス・パートナーズでは、荷主企業の皆様の立場に立ち、現状の物流コスト構造を詳細に分析し、貴社に最適なコスト削減策の立案から実行までを強力にサポートいたします。物流費の高騰にお悩みでしたら、まずは一度、お気軽にご相談ください。
よくある質問
物流費が高騰することによる企業への影響は？
物流費の高騰は、企業の利益率を直接的に圧迫し、経営に大きな影響を与えます。具体的には、製品やサービスの原価が上昇するため、販売価格への転嫁が難しい場合、企業の収益性が低下します。また、高騰する物流コストを吸収するために、配送サービスの見直しや遅延が発生し、顧客満足度の低下につながる可能性もあります。
物流費高騰の今後の見通しは？
物流費の高騰は、短期的な要因だけでなく、構造的な問題によって今後も継続する可能性が高いと見られています。特に、2024年問題によるドライバーの労働時間規制強化や、慢性的な人手不足、燃料価格の変動、さらには国際情勢による海上運賃の不安定化などが、引き続きコスト上昇の要因となるでしょう。企業はこれらの動向を注視し、長期的な視点での対策が不可欠です。
物流費の上昇率は？
物流費の上昇率は、業種や輸送距離、貨物の種類、時期によって大きく変動するため、一概に具体的な数値を提示することは困難です。しかし、近年では燃料価格の高騰、人件費の上昇、2024年問題への対応費用などにより、多くの企業で数%から二桁に及ぶ上昇が見られるケースが増えています。特に、長距離輸送や多頻度小口配送において、その影響は顕著です。正確な上昇率を把握するためには、自社の物流データを詳細に分析し、物流パートナーとの契約内容を定期的に見直すことが重要です。
まとめ
本記事では、物流費高騰の現状とその原因、企業経営への影響、そして具体的なコスト削減方法について解説しました。
2025年以降も物流費は上昇傾向が予測されているため、早期かつ継続的な対策が不可欠です。本記事でご紹介した実践的な方法を参考に、自社の物流体制を見直し、最適なコスト削減策を講じることが、これからの企業競争力を維持・向上させる鍵となるでしょう。必要に応じて、物流の専門家やコンサルティングサービスを活用し、抜本的な改善に取り組むことを強くお勧めします。
